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ことしの経済財政運営と改革の基本方針「骨太の方針」の原案が政府の経済財政諮問会議で示された。
トランプ政権の関税措置について「消費や投資を下押しするおそれがあり、わが国の経済全体を下振れさせるリスクとなっている」と指摘。
財政健全化の目標について「今年度(2025年度)から来年度(2026年度)を通じて可能なかぎり早期の基礎的財政収支の黒字化を目指す」と明記。
これまで掲げてきた今年度の黒字化が難しくなっていることを踏まえ、幅を持たせた形。ただし、市場からの信認を確実なものとするため、財政健全化の旗を下ろさないと強調している。
さらに「国債需給の悪化等による長期金利の急上昇を招くことのないよう、国内での国債保有を一層促進するための努力を引き続き行う必要がある」とも明記された。
国債の国内保有の促進や安定的な発行に言及するのは異例で、足元の金利上昇に対する石破茂政権の警戒感がにじむ内容となっている(10日付ブルームバーグ)。
4月、5月に超長期国債の利回りが上昇し、相場そのものもかなりの乱高下となっていた。これに対して、今年度国債発行計画の年限債発行を見直す可能性がでてきた。超長期債の減額の可能性である。
これとともに超長期国債の過去に発行したロークーポンの超長期国債を買入消却する(バイバック)案も浮上した。
加藤勝信財務相は10日、日銀が国債買い入れの減額を進める中、「今後の国債の安定消化に向けて幅広い投資家の方に国債を購入、保有していただく努力をしていくことが大変、大事だと考えている」と述べた(ロイター)。
この発言も含め、石破政権は日本国債の利回りの動きにかなり警戒していることがうかがえる。
その背景には、超長期債への国内投資家のニーズの低下もあった。
このため、もし今後の国債の安定消化に向けて幅広い投資家に国債を購入してもらうのであれば、利回りの急上昇への警戒もあろうが、それとともに経済実態に即した国債の利回り形成を促すことも必要となろう。
物価が日銀目標の2%どころか3%台となるなか、この水準での10年国債の利回りが1%台で収まることの方が本来は考えづらい。このために超長期債利回りの乱高下が起きたともいえる。
市場参加者が長期にわたり超低金利な慣れてしまい、そのため日銀は利上げを慎重に行わざるを得ないことなどがあり、日銀の政策金利がなかなか引き上げられないことも確かにある
それでも経済実態に即した国債利回りの形成により、投資家の購入意欲を強めさせる必要もあり、より一掃の日銀の金融政策の正常化も求められるのではなかろうか。
イスラエルのカッツ国防相は13日、イランに攻撃を行ったとしたうえで、イスラエルに対する攻撃が予想されるとして全土に非常事態を宣言した(13日付NHK)。
AP通信によるとイスラエル当局はイランの核施設を標的とする攻撃を確認したそうである。
イランの国営テレビは現地時間の13日午前3時半ごろ、日本時間のきょう午前9時ごろ、首都テヘランで複数の爆発音が聞こえ、防空システムが作動したと伝えた。
これを受けて金融市場ではリスク回避の動きが強まった。またもや東京時間での出来事となった。
外為市場では円買いドル売りが強まり、ドル円が143円を割り込み、142円台に。ユーロドルはニューヨーク時間に一時、1.1632ドルと2021年10月下旬以来の水準を付けていたが、東京時間には1.1539ドルあたりまで下落(ユーロ買いドル売り)した。
東京時間の米株価指数先物は3指数ともに大きく下落しており、ニューヨーク市場で42967ドルで引けていたダウ平均だが、東京時間のダウ平均先物は42300ドル台あたりまで下落している。
東京時間の米10年債利回りは4.33%とニューヨーク時間の4.36%から低下していた。リスク回避の米国債買いとなっている。
そして注意すべきは原油先物となる。WTI先物は13日の東京時間に72ドル台に上昇してきた。
前日にニューヨークでは68ドル台となっており、大きく上昇しただけでなく、4月2日のトランプ大統領の言うところの「解放の日」につけた70ドル台を上回ってきた。
イスラエルとイランの紛争が今後どうなるのかは見通しが立たない。しかし、中東情勢の緊迫化がこれによってさらに強まったことも確かである。
イラン情勢をめぐってアメリカのトランプ大統領は12日、記者団に対して「攻撃は十分起こりえる。大規模な衝突になる可能性がある」と指摘していた。
今回の攻撃は、イランの核開発を巡る外交的解決の行方に注目が集まる中で発生。米国とイランの交渉担当者は、6回目の協議を16日にオマーンで行う予定で、トランプ大統領は合意の実現性で「楽観できない」との見方を示していたが、これによりより困難となる可能性もある。
米原油指標のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)先物は5月5日に55ドル台にまで下落したが、その後は持ち直してきており、ここにかけて上げ幅を拡大させてきた。
原油価格は米国のトランプ大統領が各国への追加関税措置を発表した4月2日以来、世界景気の減速懸念から低迷していた。
トランプ氏のいうところの「解放の日」であった。追加関税は米債の下落などをきっかけに延期されたが、世界経済への警戒感は強まり、原油先物価格は下落した。
4月2日にWTIは70ドル台となっていたが、8日には60ドル割れとなった。5月5日には一時55ドル台を付けて、ここが目先の底となった。
その後、63ドル台まで切り返したが、OPECプラスによる原油増産の発表などが上値を抑えた。
しかし、6月に入り地合が変わり、上昇基調に転じてきた。特に11日には68.37ドルと4月上旬以来の高値をつけてきた。
この背景のひとつが、イランを巡る中東情勢の緊迫であった。
米国はイランと核開発を巡る協議を進めていた。両国は高官協議を実施してきたが合意に至っていない。
イランとの協議について、トランプ米大統領は「(合意への)自信がなくなっている」とコメント。
さらに米国が中東地域から政府職員などの退避を始めたことで緊迫感が強まってきた。米国との対立が深まればイラン側による中東の米軍基地への攻撃をありうるとの警戒も出てきた。
ベッセント財務長官は、措置を一時停止している相互関税について、来月上旬となっている期限を延長する可能性を示した。
関税の行方も不透明感となるなか、中東の地政学的リスクがあらためて材料視されて、原油価格が上昇してきた。
WTI先物は70ドルが迫ってきた。70ドル台を回復すれば「解放の日」の水準に戻ってきたことになる。ここからさらに上昇してくるとなれば、やっと沈静化しつつあったエネルギー価格全体に影響を与えかねない。
13日にイスラエルがイランに空爆したことを受けて、WTI先物価格は70ドル台に上昇してきた。
当然、物価への影響も考慮する必要があり、長期金利の上昇要因ともなりうる。
日銀が11日に発表した5月の企業物価指数は前年同月比で3.2%の上昇となった。4月の4.1%上昇から伸び率は鈍化したものの3%台となっている。
4月の全国消費者物価指数は前年同月比3.5%の上昇となっていたこともあり、現在の日本の物価は3%台とみて良いかと思う。
消費者物価指数が前年比で3%台となっていたのは、前回は1991年の1月から7月にかけてとなっていた。念の為、日本で消費税が導入されたのは1989年4月であり、1991年はその影響はなかった。
日銀は1990年8月に当時の政策金利である公定歩合を6.00%に引き上げた。これはバフルへの対応となっていた。
長期金利も日銀の度重なる利上げを受けて、1990年9月に8%台にまで上昇していた(手元のデータより)。
日本経済新聞の「きしむ日本国債」という特集記事のなかで、国債の残高が足元のペースで増え続け、民間の買い入れ余力が過去のピーク並みだった場合に、長期金利の指標となる10年物国債利回りは50年に8%を超えてくる。という東京財団の試算を紹介していた。
すでに1000兆円を超す国債残高がある段階での適切な長期金利の居所を算出するのはなかなか難しい面もある。
物価の動向からみて現在の1.5%近辺の長期金利が果たして適切なのかという疑問もあろう。
ただし、1990年から1991年当時と比較して大きく違っているのが、国債の日銀依存度である。
日銀は発行残高の半分以上を保有し、一時は政策金利をマイナスとし、長期金利までも抑え込む政策を取っていた。
物価がゼロ近傍あたりであれば、長期金利も結果として抑えられたが、その状況は2022年4月から変わった。
物価が2%を超える状況が継続し、長期金利には上昇圧力が強まり、日銀はマイナス金利とともに長期金利コントロールを解除した。
その後も利上げを行ったが、いまだ政策金利は0.5%に止まる。物価との整合性はない。かといって大きく引き上げると長期金利にも上昇圧力が掛かる。
1990年当時と大きく異なるものに国債残高もある。1990年の国債残高は200兆円に届いていない。
現在の長期金利を取り巻く環境は1990年当時とは異なることは確かである。ただし、注意すべきは、1991年につけた8%が異常なものであったとはいえないことである。
4月から5月にかけて超長期債利回りが大きく上昇していたが、これはいまの利回り水準に疑問をもった人達が仕掛けていた可能性もある。
長期金利の本来あるべき居所はどこなのか。それを冷静に探るためにも必要なのは国債への信認となる。ここが崩れると危険な金利上昇が起きる可能性も否定できない。
2025年度国債発行計画の年限債発行見直しで、超長期国債の新規発行分の減額と併せ、過去に発行した低利率の超長期国債を買入消却する案が浮上していることが9日、分かった。複数の関係筋が明らかにした(ロイター)。
4月と5月に日本の債券市場は特に超長期債が暴れまくっていた。
4月はトランプショックの影響を受けての米国債の動きに影響を受けていたが、5月も超長期債は材料が出た日に大きく乱高下していた。
これにはいくつもの要因が絡んでいた可能性がある。あまりの乱高下によって、業者も投資家もリスク許容度が低下してしまい、ポジションを取りづらくなった。これによって板が薄くなりもさらにボラタイルな相場となってしまった。
これによって日本の生保などがロークーポンのものからここにきて発行されている比較的利回りの高いものに乗り換えようとしても、ロークーポンを購入する相手が見つけづらいといった状況ともなっていたようである。
このため日銀の国債買入にそういったロークーポンを押し込んだとの観測も出て、それがさらに売りを招いたといったこともあった。
海外投資家は4月に超長期債を2兆2900億円買い越した。買越額は2月、3月に続いて過去最高となった。一方、銀行、保険会社、年金基金の代理とみられる信託銀行など、国内の主要投資家は3か月連続で超長期債を売り越した(5月20日付ブルームバーグ)。
超長期債の売買高でも海外投資家が中心となっていたが、その主体はヘッジファンドなど比較的短期で運用する投資家ではないかと考えられる。その海外投資家が特に5月に超長期債を振り回していた可能性がある。
いずれにしても国内生保の買入余力は低下しているとみられ、その分は発行額の調整を行う必要はあると思われる。
それとともに新発債を購入しやすくさせるため、ロークーポンの超長期債の処理を容易にさせる工夫のひとつとして、財務省による国債買入償却、バイバックを使う手が存在した。
バイバックは財務省が国債を買い入れて償却するという手段であり、これまでは物価連動債で使われていた。ただし、バイバックは他の国債でも可能となる。
すでに買入枠の余地は限られているようで、総枠の変更などは国会の審議が必要となる。このためすぐにバイバックが可能となるわけではない。
それでも今後、バイバックも検討事項となれば、超長期債の流動性回復の一助となることも確かではなかろうか。
6月に入り超長期債はだいぶおとなしくなってきた。これは暴れ回っていた人達が退場した可能性もある。
いずれにしても超長期国債の本来の買い手である生保などによる超長期債の運用に対して、それを容易にさせる工夫も求められることは確かではなかろうか。
6月に入ってからの日本の債券市場は、4月と5月の特に超長期債を主体とした乱高下が起きた状況から一転し、多少の動きはあるものの、落ち着きを取り戻しつつある。
4月と5月の超長期債を中心とした乱高下、どちらかといえば利回りの上昇の方が印象が強かったが、これは欧米の国債市場にも影響を与えていたとも指摘された。
特に入札時に動くことが多かったこともあり、普段はあまり日本の国債入札に関心がなかったとみられる外為市場の参加者などもその結果に注目していたようである。
4月の国債の乱高下は日本のみならず米国債でも起きていたが、それがトランプ政権の関税上乗せを延期させた大きな要因ともなっていたとされる。
トランプ大統領はFRBに1%の利下げを求めるなど、金利動向にかなり関心を持っているとされている。
これはどうやら日本でも同様であったようである。
日本経済新聞は6日、国債市場に「クジラ」の痕跡 波乱抑えた政権の危機感、という記事を配信していた。
このなかで、3日に実施した10年国債の入札の状況を指摘していた。
3日の10年国債(利率1.4%、378回リオープン)の入札は、最低落札価格99円03銭、平均落札価格99円04銭となった。最低落札価格は予想を上回り、テールは1銭と前回の18銭から縮小、応札倍率は3.66倍と前回の2.54倍を上回り、好調な結果となった。
落札先をみると、わかる範囲でのトップ3は野村証券3391億円、岡三証券2371億円、三菱UFJ証券1729億円となっていた。さらに、わかる範囲での合計が2020年5月あたり以来の少なさとなっていた。
いわゆる不明玉の多さなどからみて、記事では「状況から勘案するにクジラが動いたかもしれない」との市場参加者の声を紹介していた。
市場参加者の一部は「クジラ」と呼ばれる公的マネーの影や政府方針を巡る観測などから、石破政権の意志を感じ取ったと指摘していた。
実は10年国債の落札状況をみて、私も感じたものでもあった。
ただし、翌々日の30年国債入札では、好調な結果とはならなかった。
5日の30年国債(利率2.4%、86回リオープン)の入札は、最低落札価格91円45銭、平均落札価格91円94銭となった。最低落札価格は予想を下回り、テールは49銭と前回の30銭から流れ、応札倍率は2.92倍と前回の3.07倍を下回り低調な結果となった。
ただ、これをみてもパニック的な売りは起きなかった。どうして起きなかったのか。
私は特に5月の超長期債は短期的なトレードを行っていたヘッジファンドなどの投げ踏みが主体ではなかったかとみている。これは決算等を意識したものであったとすれば、一時的なものとなったとしてもおかしくはない。
さらに10年国債の入札動向をみて、政府の意向を嗅ぎ取った向きが、仕掛的な動きをしなかったとの見方もできなくはない。
いずれにしても30年国債入札結果をみても動揺は起きなかった。日本の債券市場で起きていた超長期債のみの市場分断が回避されつつある。今後は次第に落ち着きを取り戻すのではないかと期待したい。
全国銀行協会(全銀協)が加盟各行向けのルールを見直し、貸金庫で現金を保管するのを禁止する方針を固めたことが3日、分かった(共同通信)。
全国銀行協会は会員銀行向けの規定のひな型を改訂し、貸金庫では現金を保管できないものとして位置づける方針を固めた。
貸金庫を巡っては、三菱UFJ銀行やみずほ銀行などで元行員が顧客の資産を窃取する事案が明らかになっていた。
貸金庫に入れることができるのは株券などの有価証券のほか、預金通帳や権利書、それに宝石などの貴重品となっている。
全銀協のひな形や三菱UFJの貸金庫規定ではこれまで、格納物としての現金の扱いについて明確にしていなかったが、現金の保管を不可とすることを明示する。
ではどうして銀行口座にではなく、貸金庫に現金を置いていた人がいたのか。
日本では数十兆円規模のタンス預金が存在すると言われている。
低金利時代には利子も付かないので面倒な預金よりも現金で持つという人もいたのかもしれないが、それにはそれで盗難等もあるため、保管リスクが伴う。
現金には匿名性があり、盗まれると発見は困難になる。それはまた、現金の保有に至る経路の確認が難しくなるという側面もある。
安全に、しかも匿名性を生かす手段として、安全性が高いはずの銀行の貸金庫が使われていた可能性がある。
そうであれば今回、現金の保管を不可となったことで、貸金庫内の現金はどこへ行くのであろうか。
その銀行の口座に預ければ良いことではあるが、そもそも何故そうしなかったのかという理由も存在しよう。
そうであれば、預金口座に置くのではなく、家の金庫に保管するといった、いわばタンス預金の増加に繋がりかねないのではなかろうか。
この貸金庫事件を聞いて、思い浮かべたのが1986年の金丸脱税事件である。
この際に使われていたのが「ワリコー」や「ワリシン」などと呼ばれた割引金融債であった。
割引金融債とは当時の日本興業銀行などが発行していたもので、額面金額から一定額を差し引いた価格で購入できる金融債のことである。発行する金融機関などに行って購入するが、無記名のまま現物の証券を保有することができた。
これを使って所得隠しを行っていたのが金丸脱税事件である。ただし、いまは券面の発行は行っておらず、税制等が変わったこともあり、この手段は使えない。
その代替手段のひとつとして貸金庫が使われていた可能性もあるのではなかろうか。
6月5日から金融機関で募集が開始されている個人向け国債だが、ここにきての国債利回りの回復もあり、金利そのものが魅力的な水準となっている。
今回、募集されている個人向け国債の金利は、3年固定が0.79%、5年固定が1.00%、10年変動(初期利子)が1.00%となっている(いずれも税込み)。
5年固定は4月の1.03%以来の1%台。10年変動は2008年7月(1.00%)以来の1.00%となる。
郵貯の定期預金の5年ものが0.400%、三菱UFJ銀行のスーパ定期も5年で0.400%となっており、金利面では個人向け国債のほうが、かなり有利となっている。
ちなみに個人向け国債は通常の国債と異なり、購入後1年経過すれば財務省に額面で売却できる。半年分の利子分が手数料相当となることで額面金額は補償される。
つまり個人向け国債は債券という有価証券の一種ではあるものの、流動性リスクと価格変動リスクは存在しない。さらに信用リスクの面では、政府と民間銀行のどちらを信用するかということになる。
現状、個人向け国債はNISAとかの利用はできないが、投資先としては非常に都合が良い。たかが1%、俺は投資でそれ以上のリターンは常に出せるという方は選択肢とはならないかもしれない。
しかし、銀行預金の金利では物足りない、しかし、今後必要となる資金で、リスクには晒したくないという資金の振り向け先としては都合の良い金融商品である。
購入金額に限度もないため、預金保険相当を銀行口座にあり、残りの資金の分散先としても好都合となろう。
1000万円購入して利子1%となれば年間で10万円相当となる(ここから税金分が引かれる。また個人向け国債は半年毎の利払いなので一回あたりは5万円相当)。
6月はボーナス月ということもあり、金利面でも有利さが回復してきたことで、発行額が増加してくる可能性がある。
金利が付いてきたことで魅力度が増した個人向け国債であるが、現在は購入できるのが個人に限っているが、2027年から法人も買えるようになると報じられた。
財務省は5月8日に開いた国の債務管理に関する研究会で、2027年1月発行分から個人向け国債の販売対象を拡大すると説明した。資本金5億円未満の非上場企業のほか、学校法人などの非営利法人も購入できるようにする。
なかでも財務省が大口顧客として期待するのが、マンションの管理組合となり、こちらはかなり以前から購入希望が寄せられていたと聞く。
日銀は「債券市場参加者会合」第22回議事要旨を公表した。このなかの「現行の長期国債買入れ減額計画」に関する発言内容を確認してみたい。
「段階的な減額により、10年以下のゾーンについては、日銀保有比率は高いままであり、投資家需要対比で市中流通玉が不足しているほか、イールドカーブに歪みが生じるなど、市場機能の改善は不十分なものにとどまっているため、同ゾーンを中心に一度に大幅な減額を行う形に見直すべき」
これについては同意見ながら、4月、5月の超長期債の動きからも業者のリスク許容度が一時的にかなり低下してしまった可能性もある。一度に大幅な減額は現実的には難しいか。
「市場分断を解消し、機能度を早期に改善するために減額を早めるべきだが、一度に減額するよりは、買入れ減額を加速する形で見直しを行うべき」
これもひとつの手段であると思う。
「足もとの国債市場の動向を踏まえると、国債買入れの減額が、流動性を悪化させる方向に作用している可能性もあるため、買入れ減額をより緩やかなペースに変更すべき」
足元の超長期債の急激な動きは、日銀の国債買入減額が直接影響しているとは考えにくい。買入れ減額をより緩やかなペースに変更する必要性はない。
「ボラティリティの上昇により市場全体のリスク許容度が低下し、需給環境も良好ではない状況で減額ペースを加速させると、かえって市場の機能度を低下させる恐れがあるため、現行計画を変更することは望ましくない。また、減額は金融政策の正常化の一環と理解しており、計画の途中で減額ペースを緩めると、誤ったメッセージを送ることになるため、これも適切ではない」
まさにこの指摘が適切のように思える。予定通りの減額を進めるべきかと。減額は金融政策の正常化の一環であり、これは進めるべきものとなる。
「市場にショックが生じ、かえって減額の流れが途切れてしまうような事態は避けるべきであり、予見性を維持するという観点でも、減額の加速や一度の大幅な減額といった見直しはせず、現行計画を維持するべき」
同意である。現行計画を維持するべき。
「足もとの超長期債のように、特定の年限の流動性が著しく低下する場合には、内訳としての残存期間別の減額の割り振りを慎重に検討する必要があるものの、国債買入れの減額幅やペースの予見性を保つことは重要であり、現行の減額計画自体は変えるべきではない。」
買入の額は予定通りの減額とするが、内訳としての残存期間別の減額の割り振りについては売却が他の銘柄に比べて困難さがあるもの、例えば超長期債のロークポンのものなどを日銀に売却しやすくするといったことも望まれる。
「現行計画のもとで、過度なボラティリティが生じることなく、着実に減額が進んだことや、国債補完供給に関する措置も相俟って、市場機能度が緩やかに改善してきた点を評価している。現行計画については、当初予定どおり実施することが適切だと考えている。」
「足もと流動性が低下しているが、米国の関税政策という買入れ減額とは別要因によるものであり、計画どおりに減額を進めるべき」
どうやらこの意見が多いように見受けられる。
日銀は今月16日、17日に開催する金融政策決定会合で、減額計画についての中間評価を実施する。
5月 1 2 7 8 9 12 13 14 15
10年国債 -0.040 -0.005 0.035 0.025 0.030 0.040 0.060 0.005 0.025
20年国債 0.000 0.020 0.080 0.010 0.040 0.040 -0.025 0.005 0.030
30年国債 0.015 0.045 0.100 -0.025 0.030 0.045 -0.075 0.035 0.035
40年国債 0.015 ***** 0.060 -0.025 0.055 0.040 -0.005 0.035 0.060
16 19 20 21 22 23 26
10年国債 -0.025 0.030 0.035 0.000 0.050 -0.015 -0.030
20年国債 -0.020 0.030 0.135 -0.010 0.045 -0.050 -0.030
30年国債 0.000 0.015 0.150 0.010 0.030 -0.100 -0.030
40年国債 0.010 -0.005 0.145 0.015 0.055 -0.120 -0.015
27 28 29 30
10年国債 -0.040 0.055 0.005 -0.015
20年国債 -0.165 0.060 0.050 -0.040
30年国債 -0.185 0.070 0.080 -0.015
40年国債 -0.240 0.050 0.010 -0.020
5月の債券市場はかなり荒れたものとなったとの印象であったので、それを再確認してみた。
荒れていたのは主に超長期と呼ばれる期間10年超の国債であったため、試しに20年国債、30年国債、40年国債の前日比を抜き出してみた。比較するために10年国債も加えた。
これを見る限りにおいて、超長期債だけが突出して利回りが上昇していたわけではない。しかし、日によっては0.1%を超える変動が起きていたことはたしかである。
5月7日に30年国債が0.100%もの上昇となっていた。
この日の日銀による国債買入で、残存25年超で応札倍率が2023年5月以来2年ぶりの高水準となり、超長期債の需給悪化が意識され、現物債は超長期債主体に売られ、40年国債利回りが一時3.250%と4月中旬に付けた3.220%を上回り、2007年の発行開始以来の最高水準を更新した。
次は13日の30年国債が前日比0.075%の低下となっていたが、この日の30年国債の入札は「無難」な結果となっていた。
20日の30年国債の利回りは0.150%の上昇となっていた。
この日の20年国債(利率2.4%、192回リオープン)の入札は、最低落札価格98円15銭、平均落札価格99円29銭となった。最低落札価格は予想を大きく下回り、テールは1円14銭と前回の34銭から大きく流れた。これは入札方式がコンベンショナルに変わった1987年9月の1円18銭以来の大きさ。応札倍率は2.50倍と前回の2.96倍を下回り、2012年8月以来の低さ。最高落札利回りも2.54%と1999年7月以来の高さを記録。
次に23日に40年国債の利回りは0.120%の低下となった。
この日の日銀による国債買入の案分比率などの結果を受けて、20年債の利回りが一時2.600%と2000年10月以来の水準に上昇。30年国債の利回りも3.180%に、40年国債利回りも3.670%に上昇していたが、引けに掛けて怒濤の買いが入り、30年国債の利回りも3.065%に、40年国債利回りも3.550%に低下。10年国債の利回りは1.555%に低下した。
27日には40年国債が0.240%もの低下となった。超長期債の発行額減額観測で超長期債利回り急低下したのである。
29日に30年国債の利回りは0.080%もの上昇となったが、これは得に材料らしきものがみあたらなかった。
29日を除けば何かしらの材料があっての動きであったことはたしかである。しかもその材料に過剰本能していた。
これから推測されるのは、流動性の問題だけでなく、現在、超長期債の売買の主力となっている海外投資家が動いていた可能性が高いということである。
海外投資家というが、たぶんヘッジファンドなどが主体であり、短期筋がそれなりのポジションを振り回していた可能性がある。
売り材料に対して過剰に反応している様子をみて、言い方は悪いが、皆がボールの方向に集まってしまう「昔の幼稚園児のサッカー」のようにも思えてしまった。
注、現在の幼稚園児のサッカーはかなり技術が高くなっているとか。
ヘッジファンドの決算は6月が多いと言われ、45日ルールというものが存在するとの指摘もある。
45日ルールとは投資家がヘッジファンドを解約する際に決算日の 45日前までに解約を申し出る必要性があるというものだとか。
何とか成績を残すために投機的な動きを強めた可能性もあるが、解約に備えたポジション調整が入っていたのではないかとも推測される。
今後も日本の超長期債市場がヘッジファンドの主戦場となる可能性はあるが、果たして多くのヘッジファンドが4期、5月の乱高下をうまく切り抜けていたのかは疑問が残る。
あまりに大きな値動きは通常、「投げ踏み」によるものが多い。つまり買い方の投げ(売却による損切り)、売り方の踏み(ショートカバーの損切り)が主導力となっているケースが極めて多いためである。
6月2日現在、20年国債の利回りは2.4%台、30年国債の利回りは3%近く、40年国債の利回りは3.1%近くとなっている。
利回りからみて魅力的に見えるかもしれないが、それでは期間10年超えの超長期国債と呼ばれる国債は個人が購入できるのか。
結論としては、個人が購入するのは極めて難しいといえる。
個人向けとして財務省では、「個人向け国債」を発行しており、また「新窓販国債」と呼ばれる国債もある。
いずれも証券会社や銀行が購入可能なものとなるが、期間は個人向け国債が3年、5年、10年(変動)。「新窓販国債」が2年、5年、10年となっている。
「個人向け国債」については、1年経過後の売却の際に財務省が額面で買い取ってくれるため、価格変動リスクと流動性リスクがない。その半面、同期間の通常の国債に比べて利子が低い。
「新窓販国債」は、通常の国債の利子に近いが、売却は時価となるため相場動向次第では売却損が出ることもあるため注意が必要となる。
これらに対して、通常、入札形式で発行されている一般的な国債は、業者と呼ばれる証券会社などが落札し、それを国内の銀行や生保といった機関投資家に販売している。銀行や生保など一部投資家も直接入札はできる。
国債の入札は億円単位であり(ただし非競争入札は百万円単位)、日本相互証券などでの売買は5億円単位が主流となるなど、通常取引での売買単位が大きい。
証券会社などは超長期債を含め、落札した通常の国債を個人に販売するといったことも行うことはできる。
しかし現在の個人への販売は「個人向け国債」と「新窓販国債」が主流であり、その結果、超長期国債の個人による購入は難しくなっている。
個人にとっても超長期に対しては、例え利回りが魅力的に映ったとしても、それほどニーズはないと思われる。銀行の定期預金も10年を超えるものはほとんどない。
さらに日本の国債については半年毎に利子が支払われるが、それをそのまま同じ国債での再投資は難しい点にも注意したい。つまり、複利運用での数値上の結果はあまり現実的ではない。
国債の額面は5万円単位であり、利子分で同じ国債を購入することも難しい。利子は利子で別の運用をする必要がある点にも注意が必要となる。
5月20日の20年国債(利率2.4%、192回リオープン)の入札は、最低落札価格98円15銭、平均落札価格99円29銭となった。最低落札価格は予想を大きく下回り、テール(平均落札価格と最低落札価格の差)は1円14銭と前回の34銭から大きく流れ、低調な結果となった。
これを受けて超長期債が大きく売られ、30年国債の192回債は3.120%と前日から0.150%もの上昇となった。
中長期債も売られてはいたが、10年国債は前日比+0.035%の1.515%と超長期債に比べれば、そこまで大きく売られたわけではなかった。
ただし、この下落によって10年国債の利回り、つまり長期金利が1.5%台を回復していた。これは4月2日に付けていた1.505%以来の1.5%台回復となる。
4月2日といえば、この日、トランプ政権は世界各国・地域からの輸入品に相互関税をかけた。
中国は34%、欧州連合(EU)は20%、日本に対しては24%の追加関税を課す。3日から輸入自動車に対して25%の追加関税を実施することも改めて発表した日でもあった。
想定を超えたトランプ関税を受けて、世界経済への影響が懸念され、リスク回避の動きとなって3日の日本の長期金利は一時1.340%に低下した。7日の長期金利は一時、1.105%まで低下した。
しかし、8日の米国債券市場では、米長期金利がは4.29%に上昇し、9日の東京時間に4.51%まで利回りが急騰(価格は下落)した。
これをきっかけにして、日本の長期金利も再び上昇基調となった。そして、5月20日に再び1.5%台に乗せてきたのである。
それ以降は、一時1.5%を割り込む場面もあったが、5月30日の長期金利は1.500%となっていた。
ここにきての長期金利の回復もあり、大手銀行5行は30日、6月の住宅ローン金利を引き上げた。固定型の主な基準となる長期金利の上昇を受けたものである。
6月3日には10年国債の入札が予定されている。超長期債の変動幅があまりに大きく、中長期債の動きはあまり目立たないが、着実に金利はまた回復していることもたしかである。
市場では5日の30年国債の入札動向に注意を向けがちだが、住宅ローン(固定)などを含めて我々の生活により影響が出やすいのはむしろ10年国債の方であり、こちらの動向も要注目となる。
むろん10年国債の入札結果は個人向け国債の10年変動タイプの利子にも影響を与えるものとなる。
夏に予定されている参院選を前に野党各党が消費税減税を主張している。
野党第1党の立憲民主党は消費減税をうたっているものの、1年間の期間限定で食料品の消費税率をゼロにするというものであり、その後は給付付き税額控除に移行するとしている。
国民民主党は時限的措置として一律5%への消費減税を、日本維新の会は2年間に限定して食料品の税率をゼロにすると主張している。国民民主は財源として赤字国債、維新の会は税収増加分を充てるとしている。
これに対して、自民党は減税に消極的なスタンスを崩していない。
自民党の税制調査会は5月23日に、党本部で消費税をテーマに全体会合を開いた。年末に集中する税調会合を5月に開くのは異例。
夏の参院選に向けて野党を起点に消費税の減税論が広がり、消費税減税は「地方財源を圧迫する」などと説明した。自民党内も減税を求める意見も出ており、それを抑える狙いがあったとみられる。
この消費税減税に対して、なかなか興味深い記事が日経新聞から出ていた。
日本経済新聞社と日本経済研究センターは経済学者を対象とした「エコノミクスパネル」の第5回調査で、一時的な消費税減税の是非について聞いた。
財政状況が悪化することなどを理由に減税が「適切でない」と答えた割合は85%となった。
一時的な減税が恒久化する懸念や、物価高対策としての有効性を疑問視する意見も目立ったとある。
まさに一時的な減税で済むかという懸念とともに、消費税減税で物価高を抑制できるという保証もない。
そもそも消費税増税が物価高を招いたわけではないのは、2014年4月の10%への引き上げ時以降を確認しても明らかであろう。
さらに、日本経済新聞社とテレビ東京は23〜25日の世論調査で、消費税減税への考えを聞いた。「社会保障の財源を確保するために税率を維持するべきだ」は55%となっていた。
これは意外であった。
野党が消費税減税を求めるのは、それが国民の賛成票を得られるからとみられたが、半数以上が維持すべきとしていた。
これが完全に世論を反映しているのかはわからないが、消費税を下げれば何でもうまくいくわけではないことを国民は冷静に理解しているということではなかろうか。
夏の参院選は、この「消費税減税」が大きな焦点とみられていた。
しかし、今回の日経新聞の世論調査結果を見る限り、「消費税減税」に対し、国民は社会保障の財源を確保するためとして消極的なスタンスであった。
「消費税減税」は焦点とはならなくなる可能性がある。それよりも経済動向にも影響が出るトランプ関税への対応などのほうが焦点となるのではなかろうか。
トランプ米大統領と米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は29日、ホワイトハウスで面会した。公式の場で個別に会うのは第2次政権で初めて(30日付日本経済新聞)。
4月17日にトランプ大統領は、FRBのパウエル議長の「解任は一刻も早く実現すべきだ!」と、自身のソーシャルメディア・プラットフォーム「トゥルース・ソーシャル」に投稿した。
21日にトランプ大統領は「予防的利下げ」が多くの人から求められていると述べ、パウエルFRB議長を判断が遅すぎる男と非難したうえで、今すぐ政策金利を引き下げない限り、経済は減速するかもしれないと決めつけた。
中央銀行の独立性を揺るがせかねない事態は米国に対する信認を傷つけることなりうる。21日の米国市場では、ダウ平均は一時1300ドル以上下落。米ドルは約3年ぶりの安値を付け、米債も売られトリプル安の状況となった。
22日になって、トランプ大統領は、FRBのパウエル議長について「解任するつもりはない」と述べた。
この際にトランプ氏は、スコット・ベッセント財務長官とハワード・ラトニック商務長官からの忠告を踏まえて判断を下したとされている。トランプ発言が米国売りのきっかけになったことを配慮したものとも考えられる。
トランプ大統領は解任しないと発言を軌道修正したが、パウエル氏に対して「遅すぎる男」、「愚か者」と個人攻撃を繰り返していた。
米連邦準備理事会(FRB)は5月7日開いた米連邦公開市場委員会(FOMC)で、政策金利の指標であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標は4.25〜4.5%のまま据え置くことを決めた。
レビット大統領報道官は29日の会見で、トランプ氏がパウエル氏に対して「利下げをしないことは間違いであり、米国を中国やほかの国に対して不利な立場に置いている」と述べたことを明らかにした。
パウエル議長は金融政策の運営で政治的な配慮をしないとトランプ大統領に伝達したそうである。
金融政策の先行きについては話さず、今後の経済データに左右されるとのみ言及。「慎重で客観的な、政治的でない分析のみに基づいて行う」と強調した。
強権的なトランプ大統領ではあるが、FRBに対してはマーケットを意識して独立性を認めざるを得ないようである。
トランプ関税は違憲だとして米国内の中小企業などが起こした訴訟で、米国際貿易裁判所は28日、トランプ関税の差し止めを命じた。法律に反しているとして、10日以内に関税を停止するための行政命令を出すようトランプ米政権に命じた(29日付日本経済新聞)。
対米貿易黒字を抱える国々からの輸入品に全面的に課税することは大統領の権限を逸脱しているとの判断を示した。米国憲法は議会に他国との通商を規制する独占的な権限を与えており、米経済を守る大統領の緊急権限によってこれが覆されることはないとした。(29日付ロイター)。
トランプ政権は判断を不服として連邦の裁判所に控訴する方針とも伝えられた。最終的には連邦最高裁判所の判断に委ねられることも考えられるようだが、トランプ氏の主要経済政策にとり大きな打撃となる可能性が出てきた。
これを受けて29日の東京時間の米株価指数先物がダウ平均、ナスダック、S&P500ともに大きく上昇した。ドルも買われ、ドル円は146円台を一時回復した。東京時間の米10年債利回りは4.51%と28日の4.48%から上昇した。
トランプ大統領の関税策は米国経済への打撃になるとの観測も強かっただけに、今回の「トランプ関税の差し止め命令」は金融市場においてリスクオンの動きを招いた。
この動きから、日経平均も500円を超す上昇となり、38000円台を回復している。また、東京時間の米債が売られたこともあり、29日の債券先物は朝方に138円58銭まで下落した。
裁判所が差し止めを命じたのは「相互関税」と、違法薬物対策などを名目にカナダ・メキシコ・中国にかけている追加関税となるが、いずれも国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づき、トランプ大統領が緊急事態を宣言したうえで大統領権限で発動した。
判決文によると裁判所は大統領が世界中に関税をかける権限を「IEEPAは認めていない」と判示した。
トランプ氏がIEEPAを根拠に関税を発動したことは「大統領に与えられた権限を超えている」とも指摘した。
IEEPAは「異例かつ重大な脅威」のもとで米経済が緊急事態にある時は、大統領権限で金融取引などを規制できるとしているが「関税も課せる」とは書いていない。
そもそも「異例かつ重大な脅威」に本当に米国が晒されているのかという疑問もあろう。
今回のトランプ関税の差し止め命令で、トランプ政権が関税をすぐに撤廃することは考えづらい。ただし関税を巡り、トランプ政権は朝令暮改をくり返すなど、市場の波乱要因ともなってきた。
関税そのものが米国経済に悪影響を与える上に、物価の上昇要因ともなりかねない。トランプ大統領にとっての最大の武器が「関税」であったことは確かだが、その武器の使用の根拠に対して、あらためて疑問が持たれたことの意義は大きい。
27日の日本の債券市場では20年192回債の利回りが2.340%と前日から0.165%もの低下となった。30年86回債は2.850%(-0.185%)、40年債17回が3.295%(-0.240%)。
10年378回債が1.465%で前日比-0.040%となっており、これでも結構低下したなというイメージなので、超長期債は異常なまでの利回り低下であったことがわかるかと。
どうして超長期債がこれほど大きく動くのかといった分析はいったん置いて、どうして27日の超長期債が買い進まれたのか。その要因についてみてみたい。
すでに23日の時点が超長期債の利回りが反転低下していたが、動きそのものからみてこれは市場参加者が何かしらの動きを察して動いていた可能性があった。
その動きとして考えられるものが2つあった。
ひとつは財務省による超長期債への何かしらの働きかけである。
私自身は国債の買い入れ消却、いわゆるバイバックの可能性をみていた。特にロークーポンの国債が売りづらくなっているとの観測もあったためである。
もうひとつの手段に国債発行計画の修正もあった。ただし、新発債は利率が高くなっているため、むしろ潜在的な投資家ニーズは高いのではとも考えていた。
動きとしては、今度は日銀による「国債買入の減額」ペースの調整もあった。ただし、正常化に動きとしてここでブレーキを掛けるようなことはできれば避けたい面もあった。
結果として出てきたのが、財務省による国債発行計画の修正の可能性となった。
27日にロイターは下記の記事を配信した。
「超長期債利回りの歴史的上昇を受け、財務省が2025年度国債発行計画の年限構成を近く再検討することが27日、分かった。複数の関係筋が明らかにした。投資家の需要減衰が想定以上なら超長期債の減額も視野に入れる。6月中下旬にも市場参加者と協議し、対応策を詰める。」
すでにスタートしている当該年度の国債発行計画の微修正は可能であり、過去にも事例があった。
たとえば超長期債の発行額を少し落として、短期もしくは中長期債などに振り分けるといった可能性が浮上した。
財務省が6月20日に債券市場参加者を集めた国債市場特別参加者会合を開くが、財務省は会合に先立ち、2025年度の国債発行計画をめぐり参加者に10年債や30年債など各年限で望ましい国債の発行額を聞き取るアンケート調査を送ったと報じられた。
農水省が26日発表したコメの平均店頭価格(12〜18日時点、5キログラム)は前週比17円高い4285円となり最高値を更新した。
農水省は3月から4月にかけて3回の入札で備蓄米31万トンを放出した。しかし、上記のように値上がりが続くなど、店頭価格の抑制とはならなかった。
精米や卸など流通過程でコメが滞り、小売りや消費者に届かなかったことが原因とされたが、需給バランスが備蓄米の放出では改善されなかったということであろう。
これに対して、小泉進次郎農相は26日、農林水産省内で備蓄米放出について記者団に説明し、事務次官をトップとする集中対応チームを発足させて「5キロ2000円」との目標達成に取り組むとした。
放出手法を随意契約に改め、売り渡し価格は国が決める。集荷業者や卸を介さない中抜きによって中間マージンを節減する狙いがある。
全国の保管倉庫から契約業者の指定先まで運搬する費用を国が負担し、流通コストを抑える。
農林水産省は随意契約で売り渡す備蓄米について、来月上旬には5キロ2160円程度で店頭に並ぶと想定している。
市場に政府などが介入し、価格を修正しようとする、
つまりこれは債券市場において過去にあった日銀の指値オペに似ている。為替介入も同様ながら、銘柄がドル円という単一なものでなく、複数あることもあり、国債の指値オペに近い。
日銀の無制限指値オペは、国債買入を一定の利回りで無制限に買入れを行うことで、利回り上昇を抑制するものである。国債の価格という面からみて、価格を下げさせないことになり、コメは価格抑制となり、価格への働きかけとしては反対方向となる。
ただし、市場で決定される価格なり、利回りなりを無理矢理抑制しようとする行為に変わりはない。
コメについては備蓄の在庫量が限度となり、国債の指し値オペについては国債の銘柄別の発行額が限界といえる。
日銀の指値オペは結果として市場で形成される利回りの歪みを発生させるとともに、発行額以上を日銀が買いあげるという異常事態を招いた。
しかし、物価上昇応じた利回りの上昇は、結果として指値オペで止めることはできなかった。
今回の備蓄米の放出についても、一時的に影響は出たとしても、物価上昇など応じたコメの価格を安定的に引き下げることはできないであろう。
むろん、物価などコメの価格の上昇要因が剥落するなどすれば自然に価格は落ち着くが、政府の介入はむしろ需給バランスに応じた価格形成をおかしくさせかねないものとなる。
5月20日に実施された30年国債の入札は、最低落札価格98円15銭、平均落札価格99円29銭となった。最低落札価格は予想を大きく下回り、テールは1円14銭と前回の34銭から大きく流れた。
これは入札方式がコンベンショナルに変わった1987年9月の1円18銭以来の大きさ。応札倍率は2.50倍と前回の2.96倍を下回り、2012年8月以来の低さ。最高落札利回りも2.54%と1999年7月以来の高さを記録した。
これを受けて、20日の30年国債の利回りは、3.140%まで上昇し、発行が始まって間もない2000年11月に付けたこれまでの過去最高の3.030%を大きく上回った。
40年国債利回りも20日に一時、3.600%と、2007年の発行開始以降で最も高い利回りを記録した。つまり、発行開始後の最高値を記録していた。
さらに21日には30年国債の利回りは3.185%に、22日に40年国債の利回りは3.670%まで上昇していた。
この30年国債や40年国債の利回りの急上昇の背景としては、売買の主体が短期筋を含むヘッジファンドなどの海外投資家主体となったことで、振れ幅が大きくなり、買い方が引いてしまったことがある。
また、ロークーポンの30年債や40年債の価格が半値程度となるなどしたこともあり、売却がしづらくなってはまったこともある。
そして、欧米の超長期国債が財政悪化懸念などを理由に売られ、日本国債の超長期債にも連想売りが入り易かったことなどもあった。
投資家とともに業者もリスクを取りづらくなり、それが20日の30年国債の入札結果にも表れて、業者などのポジション調整売りなどが入ったとみられる。
しかし、そういった動きに23日にブレーキが掛かった。30年国債と40年国債の利回りが急反転、つまり買い戻されて利回りが低下してきたのである。
23日の30年国債の利回りは3.065%に、40年国債の利回りは3.550%にそれぞれ低下した(15時現在)。
この日のナイトセッションの債券先物は15時の引けの138円74銭から1円以上上昇し、139円86銭を付けていた。やや仕掛的な動きとなっていた。ただし、トランプがEUに50%関税の脅しをかけたことで、米長期金利が4.46%に低下していたことも影響したか。
しかし、(EU)に課すと脅した50%の関税について、発動までの猶予期限を延長したこともあり、26日に債券先物は139円割れとなるなど、かなり荒れた展開となっていた。
30年国債と40年国債に関しては、26日にも買い進まれており、30年国債の利回りは一時、3%割れとなっていた。40年国債の利回りは3.480%まで低下していた。
これは20日の30年国債入札結果を受けて売られる前の水準あたりともなる。
28日の40年国債の入札を控えているが、日本の超長期国債は、ややパニック的な売りは収まり、あらためて落ち着きどころを探るような展開になるのではないかと期待したい。
石破茂首相は19日の参院予算委員会で、減税の有無を問われ「金利がある世界の恐ろしさを認識する必要がある。減税して財源を国債で賄うことはしない」と述べた。浜野喜史委員(国民)への答弁。
「金利がある世界の恐ろしさ」にやや違和感を持った。金利のあるなしにかかわらず、国債への信認が低下すれば、国債価格が急落し、国債の利回りは急騰する。
たしかに日銀のマイナス金利政策と長期金利コントロールによって、短期金利も長期金利も抑え込まれていた。物価そのものが低位で安定していたことで、特に長期金利コントロールが可能かのように見えた。
ところが物価が2022年4月あたりから2%を超えて上昇してきたことで、日銀による長期金利コントロールが困難になってきた。
これは当然のことで、日銀が指値オペで抑えようとしても、物価に応じた国債の売り圧力を止めることはできない。欧米の長期金利の上昇も日本の長期金利の上昇要因となった。
日銀はマイナス金利を解除し、長期金利コントロールも解除した。短期金利を含めて金利が復活し、国債の利回りは本来、市場で形成されるものに戻ってきた。
しかし、ここまで大量の国債残存のあるなかでの金利の復活は誰も経験したことはない。
超長期債の売買高は海外投資家が中心となるなどしたこともあり、利回りは振れが非常に大きい展開が続いている。この動きなどから「金利がある世界の恐ろしさ」という言葉が出てきたのかもしれない。
夏の参院選を控えて、野党からは消費税の引き下げや廃止論が出てきている、世論調査でも消費税の減税を求める声が強まっていた。
しかし、いまだに大量の国債を発行しないと財政が成り立たない状態は続いている。減税すればその分、増税するか国債を増発するかの選択となる。
日本経済新聞社と日本経済研究センターは経済学者を対象とした「エコノミクスパネル」の第5回調査で、一時的な消費税減税の是非について聞いたところ、財政状況が悪化することなどを理由に減税が「適切でない」と答えた割合は85%となった(23日付日本経済新聞)。
現状の日本の債券市場はかなり神経質な状況となりつつある。特に超長期債がそうであり、ここに米長期金利の上昇なども加わると、国債の売り圧力がさらに強まる恐れがでてくる。
ここに消費税の減税、廃止などが現実味を帯びると、格好の日本国債の売り材料とされる恐れが出てくる。日本版のトラスショックが起きる可能性は実はかなり高まりつつあるとみている。
石破首相は「日本の財政状況はギリシャよりよろしくない。税収も増えているが、社会保障の費用も増えている」と述べ、財政規律の重要性を強調した。
財政規律は守られるという暗黙の了解がこれまでの国債の信認を支えていた。それが守られなくなる懸念が強まるだけで、市場は動揺しかねないのである。日本版トラスショックが起きる可能性も否定できない。
総務省が23日に発表した4月の消費者物価指数(除く生鮮)は110.9となり、前年同月と比べて3.5%の上昇となった。3月の同3.2%を上回り、2か月連続で伸びが拡大した。
総合指数は前年同月比3.6%の上昇、生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数は同3.0%の上昇となった。
消費者物価指数(除く生鮮)は、2022年4月以来の2%超えが続いており、2024年12月から5か月連続での3%超えとなっている。
念の為、日銀の物価目標は消費者物価指数(除く生鮮)の前年比2%である。37か月連続で、その2%を超えている。
食料が7.0%の上昇、エネルギーも9.3%の上昇とそれぞれ伸びが拡大した。
穀類 27.4%の上昇となり、寄与度が0.63。このうち、うるち米(コシヒカリを除く)は98.6%もの上昇となっており、寄与度は0.37となっていた。
また、菓子類も7.7%、寄与度0.20。このうちチョコレートが31.0%、寄与度0.10となるなど食料品の上昇が引き続き影響している。
帝国データバンクは30日、2025年で値上がりする食品の品目数が、累計で1万4409品目となり、前年実績の1万2520品目を超えたと発表した。食品各社が既に発表した10月までの値上げ品目を集計した。(30日付共同通信)。
2025年累計では最大2万品目の値上げを予想されているが、ラッシュが本格化した2022年実績の2万5768品目に並ぶ水準に達する可能性もあるとされる。
賃金動向を反映しやすいサービス価格は1.3%上昇となり、前月の1.4%からから伸びが縮小した。このうち持家の帰属家賃を除くサービスも1.7%となり、前月の1.9%から伸びが縮小。
日銀が5月1日に発表した展望レポートでは、政策委員の大勢見通しで、2025年度の消費者物価(除く生鮮)は1月のプラス2.4%からプラス2.2%にそれぞれ引き下げていた。
米国の関税による影響が読めないということもあろうが、2025年度のスタートは3.5%の上昇となった。
21日のニューヨーク債券市場で長期金利の指標となる表面利率4.250%の10年物国債利回りは前日比0.12%高い4.60%と、2月中旬以来3か月ぶりの高い水準となった。
4月9日に関税が日本時間13時に発令。この前に東京時間の米債が急落し米長期金利が一時4.51%まで上昇してきた。東京時間でこれほど米長期金利が動くことはあまりみたことがなかった。
トランプ米大統領は9日午後、同日発動したばかりの相互関税の上乗せ部分について、一部の国・地域に90日間の一時停止を許可すると発表した。
リスク回避による国債買いではなく、関税を受けた米国売りを受けての米債安となり、これを受けてベッセント財務長官がトランプ大統領に一時停止を進言したとされた。
11日には米長期金利は一時、4.59%まで上昇し、9日の東京時間で付けていた4.51%を抜いてきた。ここで米長期金利はピークアウトした。
その後、米長期金利は4月4日に一時4%割れとなったが、その後再び上昇基調となり、21日に4月11日に付けた、4.59%を上回ってきたのである。
4月の米政権の動きからみて、米長期金利の4.6%台への上昇は、危険ゾーン入りしたとの見方もできる。
今回の米長期金利の上昇の背景には、米財政悪化への懸念が根強いことなどがしてされている。
これは米国だけでなく、欧州などでも同様である。
21日は英国の30年債利回りが1か月半ぶりに5.5%台まで上昇し、ドイツの30年債利回りも3.1%台後半に上昇していた。こちらも特にドイツなどでの財政悪化観測も背景にある。
日本でも20日の30年国債の利回りは、3.140%まで上昇し、発行が始まって間もない2000年11月に付けたこれまでの過去最高の3.030%を大きく上回った。
40年国債利回りも20日に一時、3.600%と、2007年の発行開始以降で最も高い利回りを記録した。
超長期債を売買している海外勢は国内投資家に比べて財政リスクにより敏感とされる。夏の参院選を前に、物価高対策としての消費税減税の提案が与野党から出ており、債務悪化を意識した売りも懸念されている。
そのなかにあって、政府は21日、財政健全化の指標となる国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)の黒字化目標を現行の2025年度から遅らせる方向で調整に入ったとの観測も出ていた。
財政悪化とともに、米関税などによるインフレ懸念も強まっており、これも国債売りの要因となっている。
日本の長期金利も22日には1.550%に上昇し、3月に付けた1.590%が視野に入ってきた。こちらも節目を睨んだ動きとなってきた。
「債券自警団」というか、何かしらのリスクを日米欧の国債利回りの上昇が示唆し始めている可能性がある。
20日の20年国債(利率2.4%、192回リオープン)の入札は、最低落札価格98円15銭、平均落札価格99円29銭となった。
最低落札価格は予想を大きく下回り、テールは1円14銭と前回の34銭から大きく流れた。これは入札方式がコンベンショナルに変わった1987年9月の1円18銭以来の大きさとなる。
応札倍率は2.50倍と前回の2.96倍を下回り、2012年8月以来の低さ。最高落札利回りも2.54%と1999年7月以来の高さを記録した。
これはかなり予想外の事態となった。ここにきて超長期債は確かに売られていた。しかし、13日の30年国債の入札が無難な結果となっていたこともあり、20年国債も波乱はなしかとみていたが、甘かった。
予想以上に超長期債の需給が悪化している。
20日の30年国債の利回りは、3.140%まで上昇し、発行が始まって間もない2000年11月に付けたこれまでの過去最高の3.030%を大きく上回った。
40年国債利回りも20日に一時、3.600%と、2007年の発行開始以降で最も高い利回りを記録した。
主な投資家だった生損保の需要が減少している。
生保各社は保険商品と運用資産の年限差を縮める新たな規制に対応するため、ここ数年超長期債を買い進めてきた。この動きがほぼ一巡したとされる。
新発債に対しては利回りそのものも高くなっているため、入れ替えニーズも出ておかしくはないものの、ロークーポンの超長期債の処理も難しくなっているとみられる。
、ここにきての超長期債の売買の主体は海外勢となってきたこともあり、振れの大きな相場が続いている。
しかも、海外勢は国内投資家に比べて財政リスクにより敏感とされる。夏の参院選を前に、物価高対策としての消費税減税の提案が与野党から出ており、債務悪化を意識した売り仕掛けが入る可能性はある。
しかし、売り仕掛けをするとそれは超長期債を購入していた海外勢は自分で自分の首を絞めかねないような状況となる。
長い目でみて、この水準ならば買えるという動きもまだみえない。30年の3%は大きな節でもあったはず。しかし、需給バランスが壊れているような状態では、超長期債の不安定ながらも売られる状態は続く可能性がある。
石破首相は19日の参院予算委員会で、減税の有無を問われ「金利がある世界の恐ろしさを認識する必要がある。減税して財源を国債で賄うことはしない」と述べた(19日付ロイター)。
石破首相は「財政的制約を政策(遂行の)エクスキューズに使ったことはない」としつつ、「金利がある世界が現出しており、日本の財政状況はギリシャよりよろしくない。税収も増えているが、社会保障の費用も増えている」と述べ、財政規律の重要性を強調した。
加藤財務相も「海外では市場の信認が失われ国債の金利上昇、債務不履行となるケースもあり、日本でそのようなことがないよう市場からの信認の維持が必要」と述べた。
加藤財務相の発言にあった「市場の信認が失われ国債の金利上昇」というケースは、2022年に英国で起きたトラスショックを指している可能性がある。
ジョンソンの党首辞任を受けて行われた保守党党首選挙で勝利し、2022年9月6日に首相に任命されたのがメアリー・エリザベス・トラス氏であった。英国で3人目の女性首相である。
トラス英政権は1972年以来の大規模な減税を打ち出した。
クワーテング英財務相は不動産購入時の印紙税を削減。個人や企業が直面する光熱費の高騰に対し、今後6カ月間で600億ポンド(約9兆5000億円)を拠出して支援することを確認。
高額所得者に対する45%の所得税最高税率を廃止し、基礎税率も20%から19%に引き下げる。ロンドンの金融街シティーに対する規制自由化も約束し、バンカーの賞与制限は撤廃する。
英債務管理庁(DMO)は23日、2023会計年度(2022年4月〜2023年3月)の国債発行額が1939億ポンドに増額されると発表。4月時点では1315億ポンドを計画していた。
イングランド銀行は22日に0.5%の利上げ決定を発表し、保有する英国債の市場での売却を始めると発表した。
これを受けて英国債は22日に10年債利回りは3.49%と16日の3.31%から大きく上昇していたが、トラス政権の1972年以来の大型減税と国債増発を受けて、火に油が注がれた格好となった。
23日のロンドン市場では英国債の利回りが急騰した。2年債利回りは前日より一時、0.4%あまり上昇して4%を上回り、2008年10月以来約14年ぶりの水準となった。政府債務増への懸念とともに、減税策がインフレをさらに加速させかねないとの懸念も強まったのである。
これをきっかけに英国の10年債利回りだけでなく、米国債の利回りも上昇圧力も加わった。これについて「債券自警団」が戻ってきたと表現する向きもあった。
米財務省が16日に発表した2025年3月末時点の対米証券投資統計によると、海外勢の米国債保有額は9兆500億ドルとなり、前月の8兆8100億ドルから約2330億ドル増加した。外国勢による米国債購入は2か月連続で拡大し、過去最高を更新した。
対米証券投資統計のなかの国別の米国債保有高 https://ticdata.treasury.gov/resource-center/data-chart-center/tic/Documents/slt_table5.html
中国が2位から3位に転落し、その代わりに英国が2位に浮上した。
2019年半ばに日本に抜かれるまで最大の米国債保有国となっていた中国は、2021年から2024年前半にかけて保有額を縮小させてきた。
2025年3月の売買動向では190億ドルの米国債の売り越しとなった。長期債の売越額は275億ドルの売り越しとなり、比較可能な2023年2月以降で最大となっていた。
英国の保有額は7793億ドルとなり、290億ドルの買い越しとなっていた。英国の保有については湾岸産油国の資金が多いとの観測もある。
最大の米国債保有国である日本については前月比49億ドル増の1兆1308億ドルとなっていた。
4月2日にトランプ米大統領が相互関税の全体像を発表すると世界の金融市場が混乱に陥った。
8日の米国債券市場では米10年債利回りは4.29%に上昇していた。それに対してトランプ米政権による相互関税が発動した日本時間9日の東京時間に、4.52%近くまで利回りが急騰(価格は下落)していた。
この売りは邦銀や中国からの売りとの観測も出ていたが、その後の統計などからみて、国内銀行や中国からの売りではないとの見方となっている。
ただし、その前にすでに中国は淡々と保有する米国債の量を落としていた。それに対して日本は淡々と積み上げていた格好となった。
5月19日の東京時間の米10年債利回りは4.48%となっていた。
格付け会社のムーディーズ・レーティングスは5月16日、米国の信用格付けを最上位の「Aaa」から「Aa1」に一段階引き下げた。
これによる影響も危惧されていたが、16日の米国債券市場では、この格下げを受けて売られてはいたが、10年債利回りの上昇は4.49%までとなり、パニック的な売りとはなってはいなかった。
その後も落ちた付いた動きとなっているが、水準からみて大暴れしていた4月9日の東京時間に付けた水準に接近しており、今後さらに利回りの上昇圧力を強める可能性もチャートからみて否定はできない。
トランプ政権は長期金利を含めた「金利」の動きにはかなり敏感になっていることがうかがえる。それだけに、今後の米10年債利回り(長期金利)の動向にも注意を払う必要がありそうである。
格付け会社のムーディーズ・レーティングスは16日、米国の信用格付けを最上位の「Aaa」から「Aa1」に一段階引き下げた。政府の債務の拡大や利払い費の増加などを理由に挙げた。見通しは「安定的」に変更。ムーディーズは唯一、米国に最上位の格付けを付与する主要格付け会社となっていた。これにより、米国に最上位の格付けを付与する主要格付け会社はなくなった。
S&Pグローバル・レーティングスは2011年8月に、フィッチ・レーティングスは2023年8月に米国の格付けを最上位のトリプルAからダブルAプラスに1段階引き下げていた。
この発表は米国債券市場の取引時間中であり、これを受けて米債は売られ、米10年債利回りは4.48%と前日の4.43%から上昇したが、パニック的な売りとはなってはいなかった。
16日の米債は売りはそれほど大きくはなかったものの、米10年債利回りは4月11日につけていた直近の高い水準である4.59%に接近している。4.6%を抜けてくると利回り上昇が加速する恐れもある。 4月7日の東京時間に米10年債利回りが4.52%あたりまで上昇したことをきっかけに、トランプ政権が相互関税の上乗せ部分の一時停止に追い込まれたのは記憶に新しい。
ムーディーズは、現在検討されている財政案によって義務的な歳出が複数年にわたり大幅に削減されるとは考えにくいとし、米国の財政状況は過去と比較して、また他の高格付け国と比較しても悪化する可能性が高いとの見方を示した。
ムーディーズは、トランプ政権が掲げる関税措置で米国の長期的な経済成長に大きな影響が及ぶとは予想していないとしたが、これを受けてのトランプ政権の反応も気になるところではある。
実際にこれを受けてトランプ政権は拒否反応を示した。
ホワイトハウスのスティーブン・チャン広報部長はソーシャルメディアに投稿し、ムーディーズのエコノミストのマーク・ザンディ氏を批判。トランプ大統領の政敵だとした上で、「彼の『分析』を真に受ける者はいない。彼は何度も間違っていることが証明されている」とした(17日付ロイター)。
ホワイトハウスは、ムーディーズによる米国経済の信用格付けの引き下げを拒否したとの観測もあるが、格付け会社による政府の信用格付けは、誰かに頼まれて行っているものではなく、いわゆる「勝手格付け」となる。それに対して政府による拒否権などはないはずだが。
ちなみに日本では格付け会社による日本国債の格下げに対しては意見書を出経緯があった。
「外国格付け会社宛意見書要旨」財務省 https://www.mof.go.jp/about_mof/other/other/rating/p140430.htm
内閣府が16日に発表した1〜3月期の国内総生産速報値は物価変動の影響を除いた実質の季節調整値が前期比0.2%減、年率換算で0.7%減となった。民間予測の中心値の年率0.2%減を下回った。
自動車メーカーの認証取得をめぐる不正の影響を受けた2024年1〜3月期以来、4四半期ぶりのマイナス成長となった。
GDPの半分以上を占める個人消費は前四半期と比べた伸び率がプラス0.04%。物価高の影響で振わず。
設備投資は、プラス1.4%と4期連続でプラスを維持。研究開発やソフトウエア向けの投資が目立った。
輸出は0.6%減と4四半期ぶりにマイナスに転じた。知的財産権の使用料が減ったほか、24年10〜12月期に大型の案件があった研究開発サービスの反動減があらわれた(16日付日本経済新聞)。
GDP成長率にはマイナス寄与となる輸入は2.9%増と大きく増加し、成長率を押し下げた。
日銀は1日に発表した展望レポートで、政策委員の大勢見通しとして、GDPについて2025年度は1月のプラス1.1%からプラス0.5%に引き下げていた。2026年度についてはGDPは1月のプラス1.0%からプラス0.7%に引き下げていた。
今回のGDPは日銀にとってもある程度、想定の範囲内か。
米中の貿易協議が進展し、最悪の事態は避けられつつある。米国と日本などとの協議はこれからだが、90日という猶予期間を使って、調整が進められると予想される。
自動車などを巡っては協議が難航すると予想されるものの、トランプ政権が関税ありきの姿勢から、現実的な姿勢にやや変わってきている。このため、米国を主体に世界的な経済ショックは避けられる可能性も出てきている。
あまり楽観視はできないものの、極度に悲観的な見方もリスクが伴うような情勢となりつつある。
日銀はトランプ・ショックを受けて、淡々と正常化を進める姿勢から、慎重姿勢に変わってきた。
しかし、少なくとも物価は足元2%を上回っている。4月の企業物価指数は前年比でプラス4.0%となっていた。ここで正常化にブレーキ掛ける必要はないはずである。
むろん少し様子をみる必要はあろう。6月の都議会選や7月の参院選もあるため、9月の利上げの可能性はあるとみたい。。
5月13日に日銀は日銀金融政策決定会合における主な意見(4月30日・5月1日分)を公表した。このなかの「金融政策運営に関する意見」を確認したい。
「経済・物価の見通しが実現していくとすれば、経済・物価情勢の改善に応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになる。そのうえで、こうした見通しが実現していくかは、不確実性がきわめて高いことを踏まえ、予断を持たずに判断していくことが重要である」
利上げ継続の方針には変化はないものの、トランプ関税などにより不確実性がきわめて高いことを踏まえ、次回の利上げには予断を持たずに判断していくことが示された。
「米国の関税政策の展開がある程度落ち着くまでは様子見モードを続けざるを得ない。」ともあったが、これが正直な見方であろうと思う。
「米国経済減速から利上げの一時休止局面となるが、米国の政策転換次第で追加的な利上げを行うなど、過度な悲観に陥ることなく、自由度を高めた柔軟かつ機動的な金融政策運営が求められる」
この姿勢が必要であると思われる。
トランプ米政権は5月12日に中国政府との間で90日間の関税引き下げに合意したと発表した。ベッセント米財務長官はスイスで開いた記者会見で「双方が関税を115%引き下げることで合意した」と述べた。
関税は115%引き下げられ、中国への関税はことし2月と3月に発動したものと合わせ30%となる。中国側も同様の措置を取り、現在125%の対米追加関税を90日間にわたり10%にまで下げる。貿易規制など米国に打ち出した関税以外の対抗策も一時停止したり取りやめたりする。
他国との協議も今後進むことが予想されるが、最大の懸念材料となっていた米中貿易摩擦がひとまず回避されることとなった。
90日の期限明けとなる8月には、日本では参院選挙も予定されている。8月を過ぎたあたりである程度、関税などによる世界経済への影響も見えてくると思われる。
米国の政策転換次第で追加的な利上げができる条件が整うことも予想される。
国内でも参院選次第では多少、政局に動きは出るかもしれないが大きなイベント通過となる。
このため、日銀の追加利上げのタイミングとしては現状、9月18日、19日の金融政策決定会合で決定されるのではないかとみている。
もちろん物価などの動向次第では、その前に利上げを行う可能性もなくはない。それには外為市場での円安進行なども要因になりうるかもしれない。
4月4日の米長期金利は一時、3.86%まで低下した。ここが目先のボトム(底)となった。
4月7日の米債は買われていた反動もあって売りに押され、米長期金利は4.18%と前営業日の4.00%から大きく上昇し、ここから急騰することになる。このあたりから米株とともに米債も売られた格好となっていた。米国売りである。
9日に関税が日本時間13時に発令された。この前に東京時間の米債が急落し米長期金利が一時4.51%まで上昇してきた。東京時間でこれほど米長期金利が動くことはあまりみたことがない。
トランプ米大統領は9日午後、同日発動したばかりの相互関税の上乗せ部分について、一部の国・地域に90日間の一時停止を許可すると発表した。
リスク回避による国債買いではなく、関税を受けた米国売りを受けての米債安となり、これを受けてベッセント財務長官がトランプ大統領に一時停止を進言したとされた。
11日には米長期金利は一時、4.59%まで上昇し、9日の東京時間で付けていた4.51%を抜いてきた。ここで米長期金利はピークアウトした。
米長期金利は低下基調となり、4月30日には4.15%あたりまで低下する。そこから再び米長期金利は上昇基調(米債価格は下落)となった。
関税政策による貿易摩擦の激化などへの強い懸念がやや和らぎ、米国株式市場は上昇し、外為市場では売られていたドルも回復基調となった。
これらは米国売りの反動ともいえるが、米債は米国売りの反動で買われるのではなく、普通の反応に戻り、株高などを受けてのリスクオフから売られることとなる。
そして米長期金利は14日に4.54%と4月9日に東京時間で付けていた4.51%を上回り、11日に付けていた4.59%に接近してきたのである。
今回は米国売りとはなっておらず、米政権も今回の米長期金利の上昇に対しては警戒感はいまのところ示してはいない。
ただし、このままの勢いで上昇するとなれば、1月に付けていた4.80%あたりをうかがう可能性も出てきた。
トランプ大統領はFRBに対し利下げを迫っているものの、FRBは関税などによる物価への影響など不透明要素も多々あるため、容易には利下げには踏み込めないでいる。
4月の米消費者物価指数は前年同月比で2.3%上昇と予想を下回った。関税による影響はまだあまり見えてはいなかった。それでも今後の物価動向の予測は難しい。
今回の米長期金利に対し、トランプ政権が何かしらの反応を示すのか。こちらにも注意しておく必要はあるのかもしれない。
日銀が14日に発表した4月の企業物価指数速報によると、国内企業物価指数は前年比でプラス4.0%となった。前月比ではプラス0.2%と、前年比、前月比とも上昇率は前月を下回った。
日銀担当者は、企業物価は落ち着いてきたが伸び幅は過去と比較しても依然高いレベルにあると指摘。今後も不確実性の高い国際市況や地政学リスクに注意が必要だとしている(ロイター)。
4月30日、5月1日に開催された日銀の金融政策決定会合の主な意見でも、「見通しは2%の物価安定の目標を実現する姿となっており、実質金利は大幅なマイナスであるので、利上げしていく方針は不変である」との意見があった。
ただし、「米国の関税政策の展開がある程度落ち着くまでは様子見モードを続けざるを得ない」との意見も出ていた。
これについては12日にトランプ政権が、米国は中国の報復措置を理由に引き上げた部分の税率を撤回し相互関税率を当初の34%に戻したうえで、上乗せ部分の24%を90日間停止する。中国側も同様の措置を取り、現在125%の対米追加関税を90日間にわたり10%にまで下げると発表されたことで、やや関税政策については、過度な警戒モードは後退した。
英国や中国以外の日本などとの本格交渉はこれからとなる。今回の中国との交渉をみても中国側が折れてきたというより、米国内のスーパーでの商品がなくなるといった関税の弊害が表面化されるのを避けようとした米国側が慌てて関税を戻したような格好となっていた。
これからみても、他国との関税交渉についても、90日以内にある程度は進むことが予想される。
これらを受けて、4月に一時10%に低下していた日銀による年内追加利上げの確率予想値は13日には79%に上昇していた。13日の円債は中長期債中心に売られ、特に中期ゾーンが売り込まれていたのは、日銀の利上げ観測の再燃によるものと予想される。
13日には4月の米国の消費者物価指数が発表された。前年同月比の上昇率が2.3%となった。これを見る限り、関税政策の影響はまだ限定的とみられるが、今後はじわりじわりと影響してくることも予想される。
FRBについてはトランプ氏のプレッシャーを撥ね付けて、利下げについては物価動向をみながら慎重姿勢を維持してくると予想される。
外為市場では、米中の関税協議の進展をうけた米国売りの反動から、円安ドル高が進み、ドル円は一時148円台を付けてきた。
日銀の利上げ観測の再燃もあり、14日のドル円は147円近辺まで下落してきたが、基調としては円安ドル高が強まり、150円を目指してもおかしくはない。
円安が進行してくると、日銀への利上げ圧力が強まる可能性もある。
トランプ米政権は12日、中国政府との間で90日間の関税引き下げに合意したと発表した。ベッセント米財務長官はスイスで開いた記者会見で「双方が関税を115%引き下げることで合意した」と述べた(12日付日本経済新聞)。
米中両政府の共同声明によると、米国は中国の報復措置を理由に引き上げた部分の税率を撤回。相互関税率を当初の34%に戻したうえで、上乗せ部分の24%を90日間停止する。
結局、関税は115%引き下げられ、中国への関税はことし2月と3月に発動したものと合わせ30%となります。
中国側も同様の措置を取り、現在125%の対米追加関税を90日間にわたり10%にまで下げる。貿易規制など米国に打ち出した関税以外の対抗策も一時停止したり取りやめたりする。
12日の米国株式市場では、ハイテク株を中心に主要株は軒並み上昇した。中国へ依存度の高い一般消費財にも買いが入り、ダウ平均は1160ドル高、ナスダックは779ポイント高となった。
ここで注意すべき事は、米国内の薬価引き下げは業界が懸念していたほど厳しい内容ではないとの見方が出ていたことである。
トランプ大統領は12日、米国内の薬の価格を引き下げるための大統領令に署名した。外国に比べて米国内の薬価が「非常に高い」とし、30日以内に目標とする価格を製薬会社に伝えるよう指示した。
トランプ氏は、製薬会社を交渉の場に引き出すことで薬価引き下げを図る構えだ。今回の大統領令では、製薬各社に対して自主的に値下げを求め、応じなければ規制措置を講じる可能性を示した(12日付ブルームバーグ)。
これに対し、12日の米国株式市場では詳細が明らかになるにつれ、製薬株は総じて値上がりした。大統領令は製薬業界が懸念していたほど厳しい内容ではないとの見方が強まった。
米国民が支払う医療費は世界で最も高いとされている。それがイノベーション(技術革新)を促し、製薬業界の成長を後押ししたともされている。
米国では原則として国外からの医薬品輸入は違法とされているが、個人使用に限って例外が認められている。
トランプ氏は米国の薬価を引き下げるべきだとの主張に加え、他国・地域がより多く支払うべきだとの考えも示した。
ただし、米国での薬の価格が高いのは、国内の製薬企業を保護し、新薬の製造などにも力を入れるための政策ともなっている。
米国内での薬の価格を下げるのであれば、そういった前提そのものを崩すほかはないと思われるのであるが。
9日にドイツの代表的な株価指数であるDAX指数は上昇し、引け値としての最高値を更新した。これが結局、何かを示唆していたのかもしれない。
4月はじめのトランプ関税をきっかけとした乱高下も4月中旬あたりから落ち着きを取り戻してきた。その後はじりじりと値を戻す動きとなっている。これは米国の代表的な株価指数のダウ平均も同様となっている。
トランプ関税への対応を巡り、米中両政府がスイスで開いた初の閣僚級協議が、現地時間11日午後(日本時間12日未明)に終了した。出席したベッセント米財務長官は米メディアなどに「確かな進展があった。協議は生産的だった」と語った。
ベッセント氏とともに交渉を行った米通商代表部(USTR)のグリア代表は、「これほど早く合意に達することができたということは、両国の隔たりは思ったほど大きくなかったということだろう」とコメントした。
ある程度具体的な合意があった可能性があると思ったが、実際にベッセント米財務長官はスイスで開いた記者会見で「双方が関税を115%引き下げることで合意した」と述べた。
そして、ウクライナとロシアの和平交渉についても、かすかながらも希望が見えてきた。
ウクライナのゼレンスキー大統領は、ロシアのプーチン大統領が今月15日にトルコでウクライナ側との直接会談を提案したのに対し、「トルコでプーチンを待っている。戦争を終わらせるために話す用意がある」と述べ、プーチン大統領に会談を呼びかけた。
プーチン大統領はこれまでゼレンスキー大統領は非合法な大統領だと一方的に主張し、交渉相手にならないという認識を繰り返し示してきた。
果たして、ロシアのプーチン大統領がウクライナのゼレンスキー大統領の呼びかけに応じるのか注目される。さらにインドとパキスタン、そしてイスラエルとハマスの交渉が進む可能性も出てきている。こちらも進展すればリスクオンの動きを加速させることになる。
米中との関税交渉が進展すれば、今後、日本を含む他の国との交渉進展にも期待が強まろう。
さらに大きな地政学的リスクともなっているロシアによるウクライナ侵攻などについて和平が期待できるようになれば、金融市場を取り巻く地合が一気に好転する可能性もある。
過剰な期待は禁物ながら、急速にリスク回避の反動の動きが出る可能性も意識しておく必要はあるのかもしれない。
トランプ米政権は12日、中国政府との間で90日間の関税引き下げに合意したと発表した。ベッセント米財務長官はスイスで開いた記者会見で「双方が関税を115%引き下げることで合意した」と述べた(12日付日本経済新聞)。
何らかの合意があったとみられたが、90日間という期限が設けられたものの、115%の関税引き下げは金融市場にとってサプライズとなった。
外国為替市場ではドルが買い戻されて、ドル円は148円台に急騰した。時間外取引でのダウ平均などの米株価指数先物も上昇しており、ナイトセッションの日経平均先物は500円高の38200円に上昇した。
また、リスク回避の反動により、米債は売られ、米10年債利回りは4.45%に上昇した。9日の米10年債利回りは4.38%となっていた。また、日本の債券先物は引けが140円03銭だったのに対し、一時139円31銭まで下落し、72銭もの下落となっていた。
トランプ米大統領は米中協議に先立ち「80%がよさそうだ」としていたが、それを上回る歩み寄りとなったが、これは米国側の事情も影響していたとの見方がある。
対中関税でトランプ大統領は小売店大手のウォルマートやターゲットのCEOから、このままだと間もなく店舗の棚がほとんど空になると警告されて対中交渉に乗り出したとの観測である。
ある推計によると、米国が4月初旬に中国に対し145%の追加関税を課して以来、貨物輸送量は最大60%も急減。米国にとって最大級の貿易相手国からの輸入急減はまだ多くの米国民に影響を及ぼしていないものの、間もなく顕在化することになる(4月28日付ブルームバーグ)。
関税への懸念から、市民の間で商品の買い急ぎの動きも広がっていた。
すでに支持率が低下していることに加え、関税による直接的な影響が顕在化すると、トランプ政権を支持するコア層も不安を強めかねない。
米中両政府の共同声明によると、米国は中国の報復措置を理由に引き上げた部分の税率を撤回。相互関税率を当初の34%に戻したうえで、上乗せ部分の24%を90日間停止する。
中国側も同様の措置を取り、現在125%の対米追加関税を90日間にわたり10%にまで下げる。貿易規制など米国に打ち出した関税以外の対抗策も一時停止したり取りやめたりする。
これでは何のための関税であったのかともなるが、そもそもグローバルサプライチェーンが形成されており、これを受けて米国民も品物を安く手にすることができた。これをいきなり国内での製造にはできないし、したとしても急激な値上げとなる懸念も当然強い。
トランプ政権はこれを交渉の成果とするのかもしれないが、関税戦争をふっかけておきながら、自らへの被害の方が大きそうなことに気が付いての休戦協定ということになる。これを受けて日本などの中国意外の国との関税交渉も進むというか、とにかく元に戻すことを強く望みたい。
関税だけでなく、インドとパキスタン、ウクライナとロシア、そしてイスラエルとハマスの交渉が進む可能性も出てきている。こちらも進展すればリスクオンの動きを加速させることになる。
4月上旬はトランプ関税によるリスク回避動きから、株とともに米債も売られ、ドルも下落するなどトリプル安というか米国売りが強まった。今度のその反動となる可能性もあり、今後の動向に注意が必要となる。
7日の現物債の取引が奇妙なことが起きた。この日の日本相互証券では40年国債17回の付き値は、6毛甘の3.250%のみだったはずである。出来高も5億円の一本のみ(売買単位そのものが5億円単位の取引)。
ところが、16時に発表される日本相互証券の気配表では、40年国債17回は14.5毛甘の3.335%となっていたのである。
証券会社などの業者は、かなり利回りの高い(価格の低い)水準でないと、40年国債は買い入れられないことを示した。
これには7日の日銀の国債買入で25年超で40年既発をかなり甘いところで入れたところがあったためとの指摘があった。
7日に付けていた40年国債の3.250%そのものも、2007年の発行開始以来の最高水準を更新していたが、実際の気配はそれよりも0.1%以上も高くなっていた(価格は低い)。
40年国債の取引そのものも少なくなっているのは、ボラティリティが高くなり、取引することで利回りが大きく上昇しかねない状況ともなっていたためである。
どうして日本の超長期債が大きく売られていたのか。
今回の日本の超長期国債の売りの直接の要因は、財政膨張を意識したものとの指摘があった。仮にそうであったとして、そうであれば増発圧力はまず中期債に掛かるはずではなかろうか。
今回の超長期債への売りはすでに超長期債の売買高の半分を占めているとされる海外投資家、つまりヘッジファンドがアセットスワップのポジションを解かざるを得なくなって、超長期国債を投げた可能性が高い。 これを受けて市場での価格変動が大きくなり、いわゆるボラティリティが高まったことで、投資家・業者ともにリスク許容度が低下した可能性がある。簡単に言えば価格変動、特に下落リスクが大きくて保有しづらくなっている。
本来であれば、利回りが上昇したこしで日本の生保などが押し目買いを入れても良いはずだが、国内投資家が買いづらい他の要因も存在する。
それはロークーポン(低利率)の超長期国債の売却がしづらいためではないかと思われる。
40年国債でいえば、利率0.4%の9回債、利率0.5%の12回、13回債、利率0.7%の14回債などの価格は100円額面で50円前後となっている。つまり100億円分購入した40年国債の価値は現在、50億円となってしまっている。これは利回りが上昇したことで、利率の低さを償還価格との現在価格の差額で埋める必要があるため、価格そのものが低下したのである(国債の利回りと価格が反対に動くのはこのため) 。
高いクーポンの国債に入れ替えたくても、ロークーポンの国債は売却すると大きな損失が発生する。また、売ろうにもロークーポンの買い手は限られる。
7日の日銀による国債買入で25年超で40年既発をかなり甘いところで入れたところ国内投資家がいたとされたが、これもロークーポンの銘柄であった可能性がある。
ヘッジファンドのアセットスワップのストップロス絡みの超長期国債売りと超長期債のロークーポンものの処理の難しさなどが、超長期国債の売買をしづらくし、ボラティリティを上昇させている要因となっていると思われる。
9日の債券市場では、40年国債の利回りは一時3.395%と40年国債としては過去最高を更新し、30年国債の利回りが2.910%と2004年8月以来の高水準をつけていた。
13日には30年国債の入札が予定されている。利回りが3%に接近し投資家ニーズはありそうだが、ボラティリティの高さによるリスク許容度の低下や、ロークーポンとの入れ替えの困難さなどが、やや障害となる懸念もある。
米連邦準備理事会(FRB)は7日開いた米連邦公開市場委員会(FOMC)で、政策金利の指標であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標は4.25〜4.5%のまま据え置くことを決めた。
これにより3会合連続で利下げを見送ったこととなる。
声明では「景気見通しに関する不確実性は一段と増している」と指摘した。また、「失業増加とインフレ加速のリスクは高まったと判断している」とも指摘していた。
パウエル議長は会合後の記者会見で、「発表された大幅な関税引き上げが維持されれば、インフレ加速と経済成長減速、そして失業増加をもたらす可能性が高い」と発言した。
さらに「焦る必要はなく、忍耐強くいられると思う。データを見守るつもりだ」と重ねて早期利下げに慎重な見方を示した。
米金融当局の金利据え置き継続にトランプ大統領は重ねて不満を表明し、パウエル議長を繰り返し批判していた。
4月17日には米国のトランプ大統領は、FRBのパウエル議長の「解任は一刻も早く実現すべきだ!」と、自身のソーシャルメディア・プラットフォーム「トゥルース・ソーシャル」に投稿した。
ところが22日になって、トランプ大統領は、FRBのパウエル議長について「解任するつもりはない」と述べた。
この際にトランプ氏は、スコット・ベッセント財務長官とハワード・ラトニック商務長官からの忠告を踏まえて判断を下したとされている。
今回の現状維持の決定に対して、いまのところ批判めいたコメントは出されていない。FRBの独立性に配慮というよりも、市場の動向に配慮した格好か。4月の米長期金利の乱高下は記憶に新しいところとなる。
足元の経済動向をみても、4月の米雇用統計では非農業部門の就業者は前月から17万7000人増えていた。個人消費は1〜3月期に前期比年率で1.8%増となっている。
声明文でも現時点の米経済について「堅調なペースで拡大を続けている」との認識を維持した。
いまのところ利下げを急ぐ必要はない。それどころか、関税による国内物価への影響の方をむしろ警戒すべきとなる。
FRBが重視するとされる個人消費支出(PCE)物価指数は、エネルギーと食品を除くコア指数の前年同月比上昇率が3月は2.6%と目標の2%を上回る水準となっている。
これがさらに上昇してくる懸念もある以上、このタイミングで利下げを行う必要はない。
3月27日に10年国債の利回り(以下、長期金利)は1.590%に上昇した。ここでいったんピークアウトした格好となった(手元のデータより)。その後の日本の長期金利は急低下し、4月7日に1.105%まで低下した。
3月27日から4月7日にかけてどうして長期金利が低下したのか。
そのひとつのきっかけが26日にトランプ米大統領が輸入自動車に25%の追加関税をかけると発表したことによる。これを受けての米10年国債(以下、米長期金利)の動向の影響を受けた。
28日の米国株式市場はハイテク株などを主体に下落し、ダウ平均は715ドル安、ナスダックは481ポイント安となった。その後ダウ平均は一時持ち直していたが、4月に入って様相に変化が起きつつあった。
トランプ政権が相互関税を4月2日に公表することとなり、市場は身構えた。
4月2日にトランプ政権は世界各国・地域からの輸入品に相互関税をかける。中国は34%、欧州連合(EU)は20%、日本に対しては24%の追加関税を課す。3日から輸入自動車に対して25%の追加関税を実施することも改めて発表した。
トランプ米大統領が発表した相互関税が市場の想定よりも厳しい内容となり、世界経済の悪化や貿易戦争への警戒が強まった。これを受けてのリスク回避の買いが米債に入った。
中国政府は4日、米国からのすべての輸入品に34%の追加関税をかけると発表。報復の連鎖が米国だけでなく、世界経済の悪化につながるとの警戒が強まり、4日の米長期金利は一時、3.86%に低下した。しかし、ここが目先のボトム(底)となった。この日の引けは4.00%となり荒れた動きとなった。
7日の日本の長期金利は1.105%に低下して、こちらもボトムを形成した。
米国家経済会議(NEC)のハセット委員長が7日、トランプ米大統領が中国を除くすべての国・地域に対する関税を90日間、一時停止することを検討しているとの考えを示したと伝わった。ホワイトハウスがこの発言に対し、フェイクニュースだとの考えを示した。
7日の米債はここにきて買われていた反動もあって売りに押され、米長期金利は4.18%と前営業日の4.00%から大きく上昇し、ここから急騰することになる。このあたりから米株とともに米債も売られた格好となっていた。米国売りである。
8日の日本の国債も急落となり、長期金利も1.260%に上昇していた。
米国株式相場の急落を受け、一部のヘッジファンドが、金融機関のマージンコールに対応するために換金売りを急いでいるとの観測や、昨日の米3年債入札がやや低調な結果となったことを受けて、8日の米債は売られ、米長期金利は4.29%と大きく上昇した。
そして9日に関税が日本時間13時に発令された。この前に東京時間の米債が急落し米長期金利が一時4.51%まで上昇してきた。東京時間でこれほど米長期金利が動くことはあまりみたことがない。
トランプ米大統領は9日午後、同日発動したばかりの相互関税の上乗せ部分について、一部の国・地域に90日間の一時停止を許可すると発表した。
リスク回避による国債買いではなく、関税を受けた米国売りを受けての米債安となり、これを受けてベッセント財務長官がトランプ大統領に一時停止を進言したとされた。
4日に米長期金利が3.86%を付けていたのが、11日には一時、4.59%まで上昇し、9日の東京時間で付けていた4.51%を抜いてきた。ここで米長期金利はピークアウトした。
日本の長期金利も10日に1.400%まで上昇し、ここで目先、ピークアウトした格好となった。
その後は米国債と日本国債の連動性がやや薄れるとともに、日本では中長期国債と超長期国債の方向性が反対を向くことが多くなった。債券市場はかなり動揺を示し、波乱含みの展開が4月末まで続くこととなった。
4月17日、米国のトランプ大統領は、FRBのパウエル議長の「解任は一刻も早く実現すべきだ!」と、自身のソーシャルメディア・プラットフォーム「トゥルース・ソーシャル」に投稿した。
連邦準備法の10節2項に基づけば、大統領がFRB議長を含め理事を罷免するには正当な理由が必要とされる。
「正当な理由の定義は規定されていない。裁判所は一般的に、正当な理由とは違法行為あるいは不適切な言動を意味すると解釈してきた。
ところが22日になって、トランプ大統領は、FRBのパウエル議長について「解任するつもりはない」と述べた。
この際にトランプ氏は、スコット・ベッセント財務長官とハワード・ラトニック商務長官からの忠告を踏まえて判断を下したとされている。
両長官は解任を目指す動きが広範囲にわたる市場の混乱の引き金になり得ることと、厄介な法廷闘争につながり得ることをトランプ氏に警告したとされる。ある意味、当然のことであろう。
次回のFOMCは5月6日、7日の開催が予定されている。「ミスター・トゥー・レイト」と呼ばれたパウエル議長が果たしてどのような決断を下すのか。
16日にパウエル議長は「関税の引き上げは、予想をはるかに上回るものになっている。インフレ率の上昇や成長率の鈍化など経済に与える影響も同じような状況だ」とした上で「関税は少なくとも一時的にインフレを上昇させる可能性が非常に高い。インフレ効果がより持続的になる可能性もある」と発言した。
関税の引き上げによる米国内の物価上昇を懸念しているが、トランプ関税により最も影響が出るのは、米国内の輸入物価となる。輸出国にとっても影響は出るが、それはあくまで関税分の値段上昇による米国内での需要後退への懸念となる。
米国内の物価上昇が懸念されている際に、それに対して火に油を注ぎかねない「利下げ」は、当面は回避したいところであろう。
また政治に屈したとされることもできれば避けたいところであろう。
2日に発表された4月の米雇用統計では非農業雇用者数は前月比17万7000人増と予想を上回った。失業率は前月から横ばいの4.2%と、市場予想と一致した。この日の米債はFRBは利下げに慎重な姿勢を続けるとの観測が再燃したことで売られていた。
ただし、24日にFRBのウォラー理事は、労働市場がひどく悪化し始めたことがわかれば、より多く、より早く利下げをすることになると語った。
クリーブランド連銀総裁は説得力あるデータを得られれば、動くことはあるとも発言している。
このようにもしかすると全員一致ではなく、一部のメンバーが現状維持に対し「利下げ」を主張して、反対票を投ずる可能性もある。
政治との摩擦を多少なり緩和する意味でも、その可能性もなくはないか。ただし、そんなこともしたくはないと全員一致で政府の利下げ要求を撥ね付ける可能性もある。
日銀は5月1日の金融政策決定会合で、次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針をこれまで通りの、無担保コールレート(オーバーナイト物)を、0.5%程度で推移するよう促すことを全員一致で決定した。つまり金融政策の現状維持を決めた。
2日に朝日新聞は日銀に関する記事で、「実は植田総裁はほんの2カ月前まで、この5月会合で政策金利を0.25%幅引き上げるシナリオを描いていた。トランプ・ショックでそれを放棄せざるを得なくなった」と報じていた。
私も4月前までは5月1日の決定会合での0.25%の利上げの可能性は高いとしていた。しかし4月に入ってからのトランプ・ショックを受けて、その可能性は後退し、次回の利上げは早くて9月かとの認識となっていた。
このため、今回の現状維持には違和感はなかったものの、展望レポートの記述や総裁会見にはやや違和感を持った。
確かにトランプ大統領の関税によって市場の混乱だけでなく、世界経済にも大きな影響を与える懸念は強まった。それは確かに警戒する必要はある。とはいえ正常化は道半ばである。警戒しながらもそれを進めることも必要ではなかろうか。
展望レポートの概要のなかで、1月にはあった「賃金と物価の好循環が引き続き強まり」との表現が、5月には削られていた。
また、5月の展望レポートから、今後の見通しに2027年度が加えられたが、概要のなかのコメントの「見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えられる。」との表現はそのまま使われた。
つまり、「物価安定の目標」と概ね整合的な水準に到達するのは1月時点での2026年度までの後半から、5月時点では2027年度までの後半となり、先送りされたような格好となった。
そもそも日銀は物価目標は消費者物価指数(除く生鮮)のはずなのに、いつのまにか違うものに置き換えている上に、それについての具体的な数字の発表は控えている。
このあたり、政策に柔軟性を持たせるものとの解釈もできるが、漠然としていることも確かである。
今回の展望レポートでは、政策委員の大勢見通しで、GDPについて2025年度は1月のプラス1.1%からプラス0.5%に、消費者物価(除く生鮮)は1月のプラス2.4%からプラス2.2%にそれぞれ引き下げていた。
2026年度についてはGDPは1月のプラス1.0%からプラス0.7%に、消費者物価(除く生鮮)は1月のプラス2.0%からプラス1.7%にそれぞれ引き下げていた。
いずれにしても日銀はトランプ・ショックを受けて、淡々と正常化を進める姿勢から、慎重姿勢に変わってきた。
これまでも政策金利には0.5%の壁があったが、やはりここを突破しなければ正常化とは言えない。少なくとも物価は足元2%どころか3%と言う水準にある。ここで正常化にブレーキ掛ける必要はないはずである。
むろん少し様子をみる必要はあろう。6月の都議会選や7月の参院選もあるため、9月の利上げの可能性はあるとみたい。
日銀法の第三条には、「日本銀行の通貨及び金融の調節における自主性は、尊重されなければならない」とある。
これについて日銀による以下のような解説があった。そもそも平成10年4月の日銀法改正の最大の眼目は中央銀行としての「独立性」を法制度としても明確にすることである。
「過去の各国の歴史を見ても、中央銀行の金融政策にはインフレ的な経済運営を求める圧力がかかりやすいことが示されています。物価の安定が確保されなければ、経済全体が機能不全に陥ることにも繋がりかねません。こうした事態を避けるためには、金融政策運営を、政府から独立した中央銀行という組織の中立的・専門的な判断に任せることが適当であるとの考えが、グローバルにみても支配的になってきています。新日銀法において、独立性確保がはかられているのは、こうした考えによるものです」
第三条にある自主性は、つまり独立性を意味していると言うことになる。
ECBなどでは「ECB及び各国中央銀行は、本条約及びESCB・ECB法により授与された権限の行使、任務の遂行にあたり、EU諸機関及び各国政府その他いかなる機関からも、指示を仰いだり、指示を受けたりしてはならない」とある。国を跨いだ中央銀行との違いはあるが、ECBは非常に強い独立性を持っている。
これに対してイングランド銀行の独立性はあくまでも政策運営上の独立性に限定される。
またFRBの独立性は特に明文化されていない。その意味では、自主性という言葉ながら日銀には法律上、独立性が与えられているとみて良いのかもしれない。
しかし、日銀法四条には政府と連絡を密にし、十分な意思疎通を図らなければならないともある。2013年1月22日に発表した政府と日銀の共同宣言はこの四条に沿ったものと言える。
ただし、政府と日銀の共同声明の作成を巡り、首相周辺に日銀総裁の解任権を政府が持つことを求める声が出ていたことには注意すべきか。しかし、日銀法の第二十五条にもあるように、一定の場合を除いて解任されることはないとされている。
ニュージーランドでは、準備銀行法第49条で「準備銀行が、財務大臣との合意(PTA)に基づき決定された政策目標の達成を確保するにあたる総裁の実績が不十分であった」場合、総裁を罷免できるとされている。
ただしこれは、ニュージーランドでは最終的に総裁一人が金融政策を決定しているという同国の体制によるものである。
帝国データバンクは30日、2025年で値上がりする食品の品目数が、累計で1万4409品目となり、前年実績の1万2520品目を超えたと発表した。食品各社が既に発表した10月までの値上げ品目を集計した。(30日付共同通信)。
2025年累計では最大2万品目の値上げを予想されているが、ラッシュが本格化した2022年実績の2万5768品目に並ぶ水準に達する可能性もあるとされる。
18日に総務省が発表した3月の消費者物価指数(除く生鮮)は前年同月比3.2%の上昇となった。2月の同3.0%を上回り、2か月ぶりに伸びが拡大した。
コメ類は92.1%上がり、比較可能な1971年1月以降で最大の上げ幅となった。参考までにオイルショックは1973年に起きていた。うるち米(コシヒカリを除く)も92.5%の上昇となり、1976年1月以降で最大の伸び率を更新した。
コメに関連する品目では「おにぎり」が15.0%の上昇、外食の「すし」が4.7%の上昇となっていた。
人件費や物流費の上昇で3月に価格改定されたハンバーガー(外食)は5.7%の上昇、チョコレートが29.6%の上昇、コーヒー豆が21.1%の大幅な上昇となった。
原材料価格の高騰や人手不足に伴う人件費の増加なども影響し、2025年で値上がりする食品の品目数が増加している。
帝国データバンクは、最近ではエネルギーコスト由来の値上げが急増し「要因の多様化が一層進んでいる」とも指摘した。
値上げの要因がひとつではなく、いくつかの要因が重なり合っており、簡単にはこの流れが収まることも考えづらい。
14〜20日に全国のスーパー約1千店で売られたコメ5キロの平均価格は税込み4220円で、前の週より3円高く、16週連続で上昇した。政府が備蓄米の放出を表明してから2か月超たっても、米価は高止まりが続く。
コメについても単純に需給バランスだけでなく、価格上昇に複合的な要因が絡んでいることが考えられる。だから具体的にこれが要因との指摘はされていない。誰かが隠しているという指摘も正しくはないと考えられる。
消費者物価は食品のみで構成されているわけではないが、大きな比重を占めている。また、食料品の値上げの大きな要因とされるエネルギーコスト由来については食料品以外にも影響を与えていると予想される。
消費者物価指数(除く生鮮)はすでに3年も前年比2%を超えているが、この状況はまだまだ続くことが予想される。